2020年8月1日土曜日

分子の「遊び」の研究~科学者としての私はサイドアタッカーを目指す_#648

これまでの仕事を受けて、これから自分はどんな研究をするのか、いくつか申請書を書いて見えてきたのでブログにまとめます。私は、「弱い相互作用が生み出す可能性」を狙おうと思いました。これを分子の「遊び」と表現することにします笑

 タンパク質等の生体高分子間の分子間相互作用といえば、「強く特異的な」相互作用を考えることが一般的です。特定の分子に対して、特異的に (他のものと比較してそれだけ特別強く) 結合するようなものを標的とすることが一般的です。

 ところが、ウイルスの持つタンパク質の中にはあえて「特異性を犠牲にして」複数の性質を持たせるような例も存在します。例えば、HIVの逆転写酵素では、1本鎖RNA、1本鎖DNAの双方に作用し、それぞれ、ウイルスcDNA、ウイルス二本鎖ゲノムDNA (インテグラーゼでヒト細胞に挿入される) 機能を有します。逆転写酵素と言えば、RNAからDNAを合成する前者の機能のみを有している例が多いです。このように特異性が犠牲 (DNA、RNA双方に充分な反応性を有する) にされた結果、DNAを新規に合成する際の、合成のエラー (間違い) の頻度が上がります。エラーが増えることは一見不利な特徴のようで、ウイルスに対しては変異を生じやすくするメリットがあり、薬や宿主因子等に対して、耐性を持つ株を出現させやすくする長所となります。更に、この逆転写酵素は、同一のタンパク質2ユニットから成り、片方のユニットは複合体形成前に編集を受け、切断されることで形成されます。この逆転写酵素には更にRNAse (RNAを切断する) という機能まであります。まとめると、HIVの逆転写酵素は、①ウイルスRNAゲノムからのウイルスcDNA合成 (逆転写) ②ウイルスRNAの切断 (RNAse)③ウイルス二本鎖DNAの合成 (DNAポリメラーゼ) (④耐性菌出現頻度が高い)、という特性を持っています。


 このように、宿主に比べて圧倒的に遺伝子が少ないウイルスの場合、少ない遺伝子数で複数の宿主防御機構を突破するには、特異性を犠牲にして複数の機能を持たせるほうが理にかなっているのではないか、と私は考えました。そのような分子は、ウイルス以外にもきっと多く存在していて、こういったものも対象にできれば、創薬研究や機能性分子をデザインする上で、可能性が大いに広がると思いました。思い返してみると、私が過去に行った仕事では、あえて特異性を犠牲にした弱い相互作用を含む現象を理解しようとする試みが多いです。

ヒト抗ウイルス因子APOBEC3G
APOBEC3GはHIVのcDNA中のシトシン残基を脱アミノ化し、ウラシルに変換する脱アミノ化酵素です。加えて、DNA上の認識配列を探索するためにスライディング (DNA上の1次元の拡散) をすることが言われていました。

 私は、スライディングには静電相互作用が重要であることを明らかにしました。すなわち、APOBEC3G上の正電荷のアミノ酸残基と、DNA上のリン酸骨格との (非特異な) 相互作用が重要であることを示しました。そもそも今回使用したAPOBEC3GのフラグメントはDNAとの結合が弱く、加えてこのような相互作用は、弱く、非特異的であるため、通常の相互作用解析の手法で探索することは困難です。そこでAPOBEC3Gが酵素であることを利用して、反応から間接的に情報を得ました。


 加えて、APOBEC3GがDNA上をストランド間移動 (あるDNAから別のDNAに移動する) という現象を見いたしました。困難な点は↑の例と同様ですが、この例では、非基質DNAを添加し、その存在下でAPOBEC3Gの反応を観測すると、非基質DNA濃度の上昇に伴い、酵素活性に極大値が生じました。通常、非基質DNAは基質DNAと同様に結合する場合は、結合相手として競合し、その結果活性が下がります。関係しない場合は活性に影響を与えません。「極大値」というのは、「ストランド間移動」を想定しないと説明が困難です。通常ストランド間移動 (スライディングも含め) は、2つ以上の構造ユニットからなるタンパク質にみられる現象として認知されていますが、この結果は、1つの構造ドメインからなるタンパク質が1本鎖DNA上をストランド間移動することを示した、初の例となります。

 APOBEC3Gと同じタンパク質ファミリーに属するAPOBEC3Fは、酵素と基質の比のどちらが過剰に存在するかによって、長い基質DNA、短い基質DNAのどちらに対してより強く活性を示すかが変化します。前例のない例なので、モデルを作成するのに苦労しましたが、一定頻度でAPOBEC3FがDNAから離脱することを想定することで説明できました。

 このように、論文になった自分の研究を振り返ると、「遊び」をターゲットにしているものが多い印象を持ちます。

 それ以外についてもいろいろやってはいますが、論文になってないものは公にしないというスタンスなので、ここでは略。こちらの研究費等は、むしろ強い相互作用を狙ったりしてますが笑



 成功した過去の先人と、スタイルや考え方が近そうな人をあげると、マイケル・ファラデーかなぁ。大成功を収めた先人と、駆け出しの私を比較するのはおこがましいのだが、ある程度有名どころをあげないと、たぶん人に伝わらないので笑


 多くの人は、オーソドックスな、「本流」の流れをくんでいる領域で戦いたがる印象を盛ります。このようなスタイルを、私はスポーツのポジションでよくある、「センター」と表現しています。対して私は、全然関係ない価値観を持ち込んで、広い領域を横断して、切り込むスタイルなんだと思います。サッカーやラグビーの「ウイング」、バスケの「スラッシャー」PFといった感じでしょうか。私はセンターの中央ゴリゴリスタイルより、サイドアタッカーとして大外をめくる戦いをするのかな、という印象です。今の日本の研究者を見ると、みんな「センター」をやりたがっていて、「サイドアタッカー」ポジションは手薄なのではないか、といった印象を持っています。故に、私は、自身の能力とよりマッチしていると思う、サイドアタッカーのポジションを取りに行くつもりです。

研究というのは、これまで誰も見つけたことのない何か (新規性) をもたらす営みのはずなのに、なんで多くの人はレールの上を通りたがるのだろうと常々疑問に思っていました。中央の本流には人がたくさんいるので、私は自分とよりマッチしていると思うスタイル、大外をめくる戦い方をしようと思います。視野の広さと複数能力を併用するタイプ、常識や馬鹿にされる事をある程度度外視 (とはいっても最低限のマナー等は守れる)できる点、行動力等、ブログ等のアクティビティで自分でも思いますが、私は生真面目ではないです。だから、初めから生真面目に戦うつもりなどなく、大外からめくるつもりです。例えばこういった営みがそうでしょうか。

自前でファンディングするルートの模索

研究費を獲得する試みです。私自身で研究費獲得や投資家の経験、副収入源を税理士に監査を受けて確定申告できる立場を活用します。

他の人の挑戦も含め、これから既存の枠組みにとらわれず活動資金を調達する試みを紹介できればと思います。宣伝依頼は承ります笑

様々な人の研究費獲得の試みをまとめます。挑戦を応援し、相互に刺激し合うことを目的としています。

不労所得のお話@私の視点は労働者より経営者寄り
提案:夢を追いながら、安定も求める。 ~資産より不労所得を増やそう~_#438
https://ofuro-wa-shifuku-no-hitotoki.blogspot.com/2019/09/blog-post_61.html
京科学者のキレイになる実験ほか_ブログ内神庭研究室
こちらでも話した内容です: 第11期講演者 - 科学者維新塾・中之島

レアキャラポジションも笑
不動産経営者に@資産規模2000万超のポスドクになりました_#485
https://ofuro-wa-shifuku-no-hitotoki.blogspot.com/2019/12/blog-post_33.html
京科学者のキレイになる実験ほか_ブログ内神庭研究室
なんにせよ、私は唯一無二の人生を保身して生きるつもりは全くないということです笑。



確定申告は大事 (私は税理士に丸投げ、税理士に見てもらう契約で不動産もってるので笑)

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