2019年12月29日日曜日

資産形成: 奨学金と公的年金の未払いぶんを払いきるまでは個人年金に手を出すな_#486

資産2000万超のポスドクのお金のコンサル。今回は、500万円超の奨学金を抱える現博士課程学生の奨学博士2年さんから、資産形成のためにiDeCoを考えたいと相談されたので回答します。結論から言うと、奨学金と公的年金 (国民健康保険) を払いきらない内は、個人年金に手を出すな、です。奨学博士2年さんへのアドバイスと一般論をそれぞれ紹介します。
はじめに
こういう人におススメ
・奨学金をもらっている現学生、借金 (ローン、リボ含む) がある人
・現在奨学金を返済中の社会人
・学生の間、国民年金を未払い (猶予) だった人
・資産運用 (投資、個人年金、保険、定期預金含む) に興味がある人
・既婚者、将来結婚を考えている人

おススメしない人
・すでにある程度の金融リテラシーを持ち、ローン等がない人
・資産運用は絶対やらないと考えている人
・生涯独身でいこうと考えている人


結論から言います
 奨学博士2年さんの状況なら、イデコ含め個人年金、積み立て型保険、定期預金はやらない方が良いと思います。資産を作るより、借金を減らす方が優先で、イデコ等の積み立て型の金融商品では現実的に奨学金の返済には役に立ちません。まず絶対に払う必要がある公的年金 (国民年金や厚生年金等)、奨学金が優先だと思います。積み立て型の金融商品はそれが出来てからで良いと思うのです。奨学金の返済が控え、公的年金も払う必要がある。この状況でイデコ等の積み立て型の金融商品まで払ってしまうと、生活費に使えるお金が減ってジリ貧になりやすいです。老後のための貯蓄のために、今の生活を犠牲にするのは本末転倒だと思います。イデコ等の積み立て型の金融商品自体が悪いと言っているわけではなく、このような類の商品に手を出すのは収入の目処が立ち、奨学金を返せそうな見通しがたった後で良いと思うのです。特に、「あなたに金融商品を売ることで儲かる人」からの意見は、例えどんなに親しい間柄であっても、どれだけ有名な専門家であっても、一度疑ってかかるほうが良いです。

ざっくりみるなら、こちらの本が参考になります (引用1)。

 イデコについて聞かれたので、イデコのメリットは、所得控除です。即ち、所得税と住民税の軽減です。これについては、年金と重複するので、学生の猶予期間を使ってる奨学博士2年さんの場合は、年金優先の方が良いです。国民年金が破綻するなどと言われていますが、天変地異や戦争等による国家存亡の危機でもない限り、国の公的年金が破綻する (払ったお金が全くかえってこなくなる) ことはありません。むしろ、このような状況では私的年金のほうがリスクが高いと言えます。いずれにせよ、公的年金の支払いは義務なので、私的な年金を作る前に公的な年金から始めましょう。(イデコの節税は、所得控除なので、現在学生で所得税払ってない奨学博士2年さんがやってもメリットが小さいです)

 イデコ等の運用型商品は、運用期間が長いほど利益が出やすいのは事実ではありますが、イデコは最低月5,000円からなので、公的年金が払えていない今始めると、確実に奨学博士2年さんの生活を圧迫します。イデコのデメリットとして、いかなる理由があっても65歳まで引き出せません。例えば離婚などで財産分与になった場合は、現金を代わりに払う事になります。差押などになった場合は、預金や資産でペイできなければ借金となります。既に奨学金にそれなりの額を返済しなければならない奨学博士2年さんには、リスクの方が大きいと思います。このように、奨学博士2年さんが資産形成をされるなら、イデコは不向きだと思います。似た理由で、定期預金、個人年金保険の類はおススメしません。奨学博士2年さんが借りている奨学金は、有利子ですので、概ね利息は3%です。保険の利息も良くてそれくらい、定期預金はせいぜい0.1%程度で1%はいかない (外貨建ての場合は利息があがるが為替変動のリスクあり、リスクの高い商品ほど金利が高い傾向、トルコリラ等) 程度です。すなわち、奨学金を放置することによる利息の増加分が、運用益ぶんを上回り、結果損になる可能性が大きいということです。定期預金や保険で将来的にもらえるお金を増やすより、①奨学金をまとめて払うことによる金利分の支払いを減らすこと、②働いた後はとにかく10年間公的年金を支払い、年金の給付基準を満たす。この①、②を優先するほうが運用するより将来的にもらえるお金の期待値は大きくなると思います。奨学博士2年さんの場合は、公的年金がちゃんと払えている状態で、奨学金の返済が終わったタイミングで、今まで奨学金を返済していたのと同等くらいの金額で、イデコ等の運用型商品を始めるのが良いでしょう。
 現時点で、奨学博士2年さんは500万円以上有利子の奨学金 (利息3%超のローン) が残っているので、運用益で上回るためには、最低でも、初年払っている利息ぶん以上は利益を出すこと、500万円なら、利息だけで15万円余分に払う必要があり、手数料等を全て引いた後の純利益がこれ以下なら、まず奨学金を繰り上げ返済で返す時期を早めるほうが得です。従って、選ぶ商品が悪いわけではないが、まだ時期が早い、といったところ。


 では、今の奨学博士2年さんにおススメな資産形成としては、大きく2つです。
①生活に必要な出費からお金を回収する。その結果なるべく早く奨学金を返す。
②月々の手取り収入 (給料、奨学金、仕送り等の合算です) の1%以下で金融商品に投資する
 倹約等の生活習慣を変えることによる生活費の圧迫は、現実的ではないでしょう (それができるなら、すでにやっているはずです)。


①生活に必要な出費からお金を回収する。
 例えば、クレジットカード等のポイントを使う方法です。例えば、奨学博士2年さんは楽天カードを使われているとの事ですので、楽天ペイを導入し、楽天ペイ、楽天ポイントカードが使えるお店では楽天ポイントを使って支払うことがおススメです。その結果、現金の代わりに楽天ポイント (特に、期間限定ポイント) を使うことによって、現金が残ります。ポイントで大切なのは、「貯めることより使うこと」です。私は実際、貯めることに徹することなく年間ポイントで年間15万円相当を貯めていますし、楽天ポイントをうまく使えば、少し慣れれば普段の生活から年間2万円程度達成するのは難しくありません。また、楽天カードでしたら、カード引き落とし時に楽天ポイント (通常) から支払うことが可能で、この方法でも使う現金の量を減らすことができます。また、楽天ポイントを貯めているなら、口座引き落としや給料等の振込 (個人以外) 1回につき、1~3ポイントもらえる楽天銀行 (使い方によってはATM利用手数料を何回か無料にできます)、楽天証券で楽天ポイント (通常) を使って投資信託を買う (iDeCoに選ばれている商品は国が酷い (ゴミ) 投信ではないとお墨付きを与えているものなので、迷ったらiDeCoに選ばれている商品から、iDeCoではなく、ポイントのみで購入すると良いと思います。ちなみに、楽天証券やSBI証券では、会社四季報が無料で読める (同業比較等、企業情報を知れる) ので、就活を考えている場合は、何も買わずとも証券口座を開いておくことをおススメします。追記としては、楽天銀行は楽天証券とマネーブリッジ (口座連結) することで、普通預金の金利が0.1% (定期預金レベルの高水準) となるのでおススメです。

②月々の手取り収入 (給料、奨学金、仕送り等の合算です) の1%以下で金融商品に投資する
 今後、年金や奨学金の返済がある奨学博士2年さんの場合、生活に問題ない程度の少額、月々の手取り収入 (給料、奨学金、仕送り等の合算です) の1%以下で買える金融商品を選ぶと良いと思います。理由は今後のために慣れるためと、あのときやればよかった的な未練を断つため。何事も、未経験者が挑戦したところで、大抵失敗します。悪い例が「投資未経験者の退職金の運用」です。どんなに事前に準備しても、やったことがないスポーツ、ビジネス等は普通はいきなりは勝てません。才覚があるにせよ、それなりのレベルの相手に勝つにはある程度の経験が必要です。勝手に夢を見るな。投資では一発逆転できる等と考えるような経験が浅い人は、99%カモです。そんな人がにわかの知識と経験で勝てるほど、物事は甘くありません。
 ではどうやって経験を積むかというと、生活に問題ない額でとりあえずやってみること。どんなに勉強したところで、自分でやらないと所詮は他人事、実感はわかないでしょう。痛みを伴う失敗と隣り合わせになることによって、はじめて自分事になってちゃんと学ぶ気になるものです。その中で、何をみて、どう行動するのか、自分で掴むしかありません。投資については、誰かを勝たせるアドバイスはありません。勝てる人がみるタイミングや間合いがあっても100%踏襲することなど誰にもできません。それができないから投資というビジネスが成り立ちます (割を食う人がいなければこのような形態のビジネスは成り立ちません)。例え少額ではあっても、実際やってみることで、自分にそれが向いているか考えるきっかけになるでしょう。一度やってみると気になるもので、それぞれの指標にはどんな意味があり、自分ならどの指標をみればよいのか、そういう判断は、誰かを参考にすることはあっても、自分で掴もうとしないとできるようになりません。だから、やるなら1%、手取り30万円なら3千円くらい、これくらいなら、損しても勉強だと思って割り切れるのではないでしょうか。ちなみに、低収入者 (ローンや減価償却で見かけの所得を下げている場合も含む) には米国株の配当 (2重課税の控除)、もう少しお金に余裕があるなら、株主優待銘柄 (自分が良く使うサービスを提供する企業) を選ぶのもおススメ (更にその株を貸株して貸し出し、配当と年間0.1%程度の金利収入を得ることも可) です。

 株であれば、日本株は通常100株単位で売買しますが、カブドットコム証券、マネックス証券、SBI証券、SBIネオモバイル証券、LINE証券は1株から取引でき、安いものは100円から1000円程度で購入できます2。例えば、私がメインバンクで活用している三菱UFJ銀行は600円程度で1株を購入できます (配当で年間4%程度バックします)。↑のうち、私のおススメはTポイントで株が購入でき、手数料が実質月額20円のネオモバ、Lineポイントで株を使えるLine証券です。奨学博士2年さんの状況であれば、現金を使わず、ポイントで買えるものを選ぶと良いのではと私は思います。投資信託であれば、楽天ポイントで投資信託を購入できる楽天証券、Tポイントで投資信託を購入できるSBI証券がおススメです。いずれも100円から投資信託を購入できるので、とりあえず「ポイントを使って買ってみる」。向いてそうなら続け、向いてなさそうなら資金を引き揚げる、立ち回りがおススメです。こんなんじゃ増えねぇよ、と思われるかもしれませんが、増やすよりまず慣れることが優先です。自分の勝てそうなやり方を見つけて初めて、増やすステップに入れます。科学実験でもビジネスでも、いきなり大規模にやらず、小規模にやってから規模を大きくします。いきなりやって増やせると思うなよ、ということです。

  引用2: 株は「1株=数百円」の資金から始めるのがおすすめ!“1株単位”で株が買える「5つのサービス(S株・プチ株・ネオモバなど)」の手数料や銘柄数、注文時間を解説!|ダイヤモンドZAi最新記事|ザイ・オンライン

一般論: 公的年金と私的な資産形成
 ここからは参考までに一般論です。厚生労働省が発表した平成30年度の年金額によると、国民年金の場合64,941 円、平均標準報酬 (賞与含む月額換算42.8万円) で 40年間就業し、 妻がその期間すべて専業主婦であった世帯の標準受取額は221,277 円と試算されています3。この試算だと、老後は年金だけでは赤字の世帯がほとんどで、多くが貯蓄の取り崩しによって生計を立てることが想定されます。そのため、公的年金を補う存在としての私的年金が金融商品として売られています。また、不動産、投資信託や株式投資や定期預金等の金融商品も、個人の資産形成として注目され始めています。
  引用3. 【別添】平成30年度の年金額改定について(PDF:250KB)

 私は、いたずらに老後不安を煽り、商品購入に導くのは売り手側の悪いやり方だと思うのです。商品を売る側が、自分達の都合で買い手側からすると損になる商品を交わされていることは実際に多いです。例えば、かんぽ生命の不正問題4。このように、大手企業ですら、わかる人が見れば「酷い商品」を売りつけていることは現実にあることです1。酷い商品というのは、儲からない金融商品だけでなく、金融商品としての質は高いけれど、その人のライフスタイルに合っていない商品を含みます。ましてや零細企業に至っては、この限りではないことは想像に難くないことだと思います。では、フィナンシャルプランナーは公平かと言えばそうとも限らず、特定の金融商品の営業をしている場合もあるので注意が必要です1。ちなみに、私なら絶対にやらないのが、「有料投資 (資産形成) セミナーや投資系 (資産形成) オンラインサロン」、信者になっても勝てないから、日本の投資家の8割が負けているのです。カリスマを追いかけるだけで勝てるなら、日本人はもっと株で儲けています。
  引用4. かんぽ生命、不正契約6327件 法令違反は1400件 - 産経ニュース
  引用1.マンガでわかる シンプルで正しいお金の増やし方【電子書籍】[ 山崎元 ]

 老後のためにと個人年金や投資にお金をかけるのは間違った考えではありませんが、その金は誰がいつ使うのかしっかり考える必要があります。例えば、若手のうちは遊ぶお金や自己投資のお金も必要だと思いますが、私なら、若手のうちにそういう出費を我慢し、歳をとってから使い始めよう、とは思いません。収入に対して多くのお金を公的年金含む年金に投じると、資産は増えるけどその資産を引き出すことができないので、いざという時に使えるお金が作れず (冠婚葬祭、起業、転職、転居、家具等の購入等)、生活が相当苦しくなることはわかりますよね?
 
 例えば、月給25万円で国民年金が月額2万円、扶養家族なしの賃貸物件に一人暮らししている人の例で試算してみましょうか (学振DCを参考に)。基礎控除38万円と国民年金24万円ぶんの控除を合わせて、所得税、住民税が合計203,800円かかります。月額にすると、16,983.33円。年金と税金で約4万円支払います5。生活費としては、家賃を除いた一人暮らしの大学生の平均的な生活費が7.6万円ということにしましょうか6。その内訳は、食費: 約25,000円 (全て自炊)、水道光熱費: 約8,000円、娯楽費・交際費: 約20,000円、通信費: 約10,000円、その他購入費(衣類・日用品) 約13,000円、合計:約76,000円です。社会人だとかなり節約した額だと思いますが、これで約117,600円。家賃も大学生の平均 (社会人としては控え目) でみると、55,000円7、ここまでで約170,000円。残り8万円です。この状況で4万円を個人年金、保険、定期預金等に使っても、まだ4万円も自由につかえるお金が作れるよと、悪質な部類のフィナンシャルプランナーや金融商品の営業が言いそうだと私は思います。
  引用5: 税金計算機 | 所得税・住民税簡易計算機
  引用6: 大学生の一人暮らしの平均生活費|仕送りやアルバイト代などの費用を解説!
  引用7: 一人暮らしの大学生の平均家賃!間取りや通学時間などお部屋探しの条件も紹介!

↑の試算は破綻しています。一見計算上は大丈夫そうですが、知人の結婚式にお祝儀3万円、交通費自腹で参加したら赤字ですね。海外に旅行したら (標準的な航空券代だけで韓国や台湾ですら2~3万、ヨーロッパやアメリカだと12万円程度かかります)。冷蔵庫等の大型家電 (10万円程度) が壊れて買い替える必要が出たら、恋人と少し豪華なデートをしたら、エステに行ったら、車を買ったら、借金があったら、、、これでは簡単に想定できるレベルの偶発的な出費ですぐ赤字となり破綻します。赤字になった結果は、誰かにお金を借りる、借りる知り合いがない場合は金利の高いローンです。ギリギリで生活し、多少ヤバくなったらローンに頼るのは、借金地獄に落ちる考え方の典型です。絶対にやるべきではありません。↑の試算のような、最低限に抑えた生活をするのは、本当に収入が少なくお金を使わない生活を強いられる人、余程の倹約家や無趣味な人でしか成り立ちません。老後が不安だからと倹約に徹した場合、その生活で満足できますか?楽しいですか? 倹約は、本当にお金が足りないときに仕方なくするもので、貯蓄ができるのに常時倹約したら、普通の感覚の人はしんどいです。いざというときや、本当にやりたい何かができたとき、動かせるお金を持つことは、老後資金を作ることよりずっと大切だと私は言いたいのです。

参考
私のROOMへのリンクはこちら。HTML編集してサムネ作ったよ。

ROOM、事実上の私のネットショップ。お勧めの本や、調味料、インテリアから、本職の研究業界の人が扱う実験機器まで、幅広く扱っております笑

不労所得を増やす啓発もしています。皆が豊かになればいいと思う。
提案:夢を追いながら、安定も求める。 ~資産より不労所得を増やそう~_#438
https://ofuro-wa-shifuku-no-hitotoki.blogspot.com/2019/09/blog-post_61.html
京科学者のキレイになる実験ほか_ブログ内神庭研究室
ポスドクにして不動産経営者になった話。なんで?

不動産経営者に@資産規模2000万超のポスドクになりました_#485
https://ofuro-wa-shifuku-no-hitotoki.blogspot.com/2019/12/blog-post_33.html
京科学者のキレイになる実験ほか_ブログ内神庭研究室
ポイントの貯め方、使い方のコンサルもしてます笑
ポイ活上級者によるポイント獲得コンサル_#459
https://ofuro-wa-shifuku-no-hitotoki.blogspot.com/2019/11/blog-post_97.html
京科学者のキレイになる実験ほか_ブログ内神庭研究室
多くの人は宝くじに当たっても金持ちになれないでしょう。散財は富豪のお金の使い方ではなく、富豪だと見られたい人のお金の使い方だと思います。金持ちになるには、「収入」以上に、お金の使い方を知ることが重要だと思います。金利、福利、税等の金融リテラシーはあるほうが良いでしょう。年収3,00万円でリッチな人、年収2,000万円で貧乏な人と言うのは起こり得ます。使い方は大事です。

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