2022年2月28日月曜日

科研費採択、コロナから着想した新テーマで出したことない領域だしたら通ってた_xx

後半に (内容は黒塗りですが) 科研費の申請書のっけてみました。Twitterを眺めて、科研費合否の話が流れてたので、確認したら採択されてました。若手研究の枠です。これまでやったことがない試料、出したことがない領域、しかも私が作った新規テーマなので、正直ダメ元 (とはいえ頑張って作ったけど) で、驚きました。このテーマは、新型コロナウイルスが人類に大きな被害を与えたことに着想し、似た仕組みで癌に有効打を打つことを考えたものです。また、「人のためになる」ということを意識して作ったテーマでした。 


ウイルス研究から出発した独立テーマ

 これまで私は、主として宿主因子とウイルスの攻防 (特にヒトAPOBECタンパク質 vs HIV-1 Vifタンパク質) に関する研究 (特にタンパク質などの分子レベル) を行ってきました。他、転写因子や核酸結合タンパク質や、木質バイオマスの有効利用等、並列していろいろやってますが、コラボ案件なので現段階では伏せておきます。コロナショックで活動制限等が行われ、社会インフラに大きな影響が出る傍らで、ウイルスに関わる科学者として、なにか着想できないかと考えていました。私の見解としては、新型コロナは (HIVやエボラウイルス、狂犬病ウイルス等の致死性が高いウイルスと比較して) 致死率が低いものの、感染力が強く、呼吸疾患を伴うことによって人間の医療インフラを機能不全に陥れる可能性を有してると思います。少数の強キャラではなく、弱キャラによる人海戦術や兵糧攻めのようなスタイルな印象です。このような仕組みを模すことで、癌に有効打を打てるのではないかと着想しました。所謂、デバフ、例えばドラクエのルカニとかFFのスロウに相当する操作を癌細胞にかけてしまおうと考えました。多くの癌治療では、癌細胞を殺すことに焦点をあてています。今回の研究課題のコンセプトは、癌細胞を殺さず、あえて生かし、生きている癌細胞から別の細胞にデバフをかける (生命活動を遅延する) ことに焦点をあてています。素材としても標的としてもチームとしては初で、全くの新しいテーマとなります。採択までチーム内で相談すらしてないので、事実上、独立したテーマを立ち上げ、研究費がついたということになります (採択後にチームに報告したら、立場が上の人ほど驚いていました笑)。

人のために、という視点から

 研究費に関しては、科研費の若手Bに採択された後は、不採択が何度か続いていたこともあり、どんなテーマが採択されるのだろうか考えを巡らせたことがありました。視点が変わりますが、私は投資家としても活動しており、ビジネスという観点からも、お金が集まるテーマというのは、人の役に立つテーマが大半という印象を持っています。私の場合は、基礎研究が主戦場なので、実用や臨床に直性関わらないことが多いですが、どうやら基礎研究であることは本質とは違うと思いました。私のこれまで不採択になったテーマを見返してみると、「現在の研究の延長」になっていると思いました。そのモチベーションは学術的興味や好奇心等によるものであり、大義名分として薬を創る的なことは言ってはいますが、本質は「自分のため」になっていた印象を持ちました。だから「人のため」という視点を強く意識してテーマを創りました。私自身、数年前に大腸から (内視鏡手術で) 腫瘍を摘出 (結果良性ではあったが) した経験がありました。一度取り除いた腫瘍、再発しないか怖いと思うでしょう。誰もが末期癌にはなりたくないと思うでしょう。しかしある程度の大きさにならないと腫瘍は認知できないし、その間に取り除くことができない部位に腫瘍が現れたら? こういう人たちのために、癌の成長を遅らせればこの不安が幾分か小さくなり、恒久的に癌の成長を遅らせることができれば、手術をはじめとしたあらゆる治療法を行うための時間を稼げると思いました。有効打ではなく、デバフという考えは、恐らく他の治療法を行っている人にとっても、有益だと思います (バイオマス関連の研究で、シナジー効果について着目していたので、その応用でもあります)。思い返せば恋愛とかでも、「人のため」に何かしたことが結果として良かったことも多かったです。私はSな性格ですから、研究でも「自分のため」に進みがちなのですが、「人のため」という視点を意識して足すと、結果チャンスが広がるのではないかという気がします。

癌領域への挑戦、当該分野の実績はおろか経験値も0から

 新しい領域に進出するのにあたり、癌領域に申請書を出したのですが、私は癌については研究業績0 (論文も学会も0) でした。せいぜい使っている試料に関係がある程度です (APOBECタンパク質の一部に癌で発現量が増えるものもある。核酸結合能を有するタンパク質が結果として癌に関係するなど)。これまでやっていた領域では論文等はありましたが、果たしてそれが評価されるかというところです。それも、論文にするのが遅くなっている部分もあり、今まとめて論文三本くらい連続で投稿準備してる状態、やった仕事の半分くらいは学術論文として反映されてない状態なので、相対的に評価が低く見積もられる可能性が大きいと思っていました。そこで工夫したのは準備状況です。チーム内で試料を扱える環境や相談できる人の存在。それから私自身の遺伝子設計の経験と、タンパク質や核酸を扱ってきた実績があることを紹介。癌自体を研究対象としたことはないけど、今回の研究で行う予定の環境にはちょっとずつ触れていて、下準備はできている、あとは金だけだ、的な主張をしました (もちろん、そういう準備も水面下でしています)。予備データはまだとってないことや、癌研究それ自体の経験が0であることは正直に申請書に書きました。

申請書公開

 申請書を書くにあたって、私は癌該分野では業績0ですから、業績で当該分野に元々いた人に (新天地挑戦のため) 敵わないと考え、特にタイトルと概要とそのコンセプト図でアピールしました。タイトルと冒頭で、ぱっと見1分で、読んでみてもいいかな、と思ってもらえるか否かが最も大事に思っていました。次に、プロジェクトの独自性 (何が新しいの) と創造性 (何の役に立つの)。その上で従来の分野からなぜ挑戦し、それがどう生きるのか (なぜ私がやる意義があるのか)、チームのバックアップ体制をはじめとした環境を達成可能性としてアピールしました。私は癌分野では業績皆無だったので、業績よりシンプルさ、読みやすさを重視しました。

冒頭。一番気を使った部分。ちなみに私は申請書の図は遠目で見ても図だとわかりやすいよう (特にレジェンドが本文と並ぶと読みづらいので) 外枠で囲っています。

魅力の部分はこれからやる仕事ですし、当然明かせません笑。着想の経緯 (新型コロナから着想したこと) も正直に書きました。ちなみに、いつ思いついたかはブログに書いてました笑。京科学者のキレイになる実験ほか_ブログ内神庭研究室: 差し込みが見出す光明~癌の成長遅延、不老不死?、私の新研究テーマ_#772

計画もイラストで描いた。予備データ等はないので合計Fig2つ。
計画は見せられませんが (項目ごとに分けて書いています)、実験はこれから行う予定と正直に書きました。
実現可能性。これまでの仕事の紹介と支援体制の話。
業績ページです。研究やってる以上 (タイトルは) 全部筒抜けのようなものなので、隠す必要なし笑。書ききれない部分は個人ホームページみてねと書いてます。

これまでの中心テーマがひと段落することもあり、節目としては良いのではないかと思います。忙しくはなるかもしれませんが、それも人生だと受け入れて、良い意味で楽しみつつ (とはいえ仕事なのでまじめに) やっていければと思います。審査していただいた諸先生方や、チームや周りの方のためにも、しっかり結果でお返しできれば (とはいえ気負わず) と思います。

ある意味着想のきっかけかもなエピソード。

実は九死に一生?!ガン (消化管カルチノイド腫瘍) を偶然取り除けたかもしれない件@内視鏡手術_#321
https://ofuro-wa-shifuku-no-hitotoki.blogspot.com/2019/04/321.html
京科学者のキレイになる実験ほか_ブログ内神庭研究室

正規ルートと別に私が進めている裏ルートです笑。

万年助手の地位を金で買うことを起点として、「悪の総帥」として君臨するキャリアパスを考える_#789
https://ofuro-wa-shifuku-no-hitotoki.blogspot.com/2021/06/kari.html
京科学者のキレイになる実験ほか_ブログ内神庭研究室

投資家としての資産運用の実績など。↑で道をこじ開けるために実践中笑。

個人投資家としての成長の記録60ヶ月目@2021年12月: 証券口座内の合計資産6,684,402円_#54
https://keisukekamba2point8.blogspot.com/2022/02/60202112-668440253.html
実験科学者の株式運用ゲーム

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